序章 演奏行為への問い
1 「作品の演奏」と「作品による演奏」
・「演奏家の芸術」
・「作品」の演奏
・「作品」による演奏
・「作品の演奏」と「作品による演奏」の絡み合い
2 「作品」から「演奏」へ
・「作品」の重み
・演奏本位への視点の転換
・作曲家偏重への異議申し立て
3 本書の構成
第1部 演奏の諸相
第1章 バッハをピアノで弾く:演奏の平行世界
1 今日の学識からすれば
・ロマンティックなバッハ
・「課題はひとつ」
・相容れない流儀の並存
2 多種多様な流儀
・バッハはピアノでは弾かない
・ピアノの重要なレパートリーとしてのバッハ
・ピアノによるバッハ演奏の分類
・ピアノ志向+反HIP志向
・チェンバロ(反ピアノ)志向+HIP志向
・チェンバロ(反ピアノ)志向+反HIP志向
・ピアノ志向+HIP志向
3 演奏の平行世界:演奏の行為論に向かって
・「課題はひとつ」ではない
・複数の正しさ
・平行する演奏世界
・演奏の始点としての作品
第2章 作曲家の代理人:「解釈」としての演奏
1 演奏「解釈」
・「解釈」とは
・「謎」の文書としての楽譜
・謎解きとしての演奏
2 「解釈」の目指すもの
・作曲家の意図
・作品の音像
・作品の構想
・作品の本質
・「真正さ」の不確かさ
・複数の真正さ
3 ゲームとしての演奏
・解釈者は裏切り者?
・努力目標としての「作曲家の意図」
・「ゲーム」という視点
・音楽作品の解釈ゲーム
・演奏は「解釈」に尽きるものではない
第3章 作品から遠く/近く離れて:「創造」としての演奏
1 演奏における創造
・解釈と創造の二律背反?
・強い創造/弱い創造
・創造と解釈の関係
・音楽作品による創造ゲーム
2 創造的演奏:あるいは「創造」と「再創造」の間
・「再」創造行為としての演奏――グールドの場合
・演奏自体の創造――ホロヴィッツの場合
・作品からの離脱――ジェフスキの場合
・傍流としての創造ゲーム?
3 演奏における創造の行方
・ゲームに変化をもたらす契機
(1)「作曲」のありようの変化
(2)他の音楽ジャンルからの影響
(3)HIPの研究・実践がもたらす新たな認識
・「創造」と「解釈」の新たなかたち
第4章 演奏それ自体:「技芸」としての演奏
1 「技芸」としての演奏
・「私たちはピアニストを聴きに行ったわけで」
・「技芸」の魅惑
・演奏ゲームの中での「技芸」の位置づけ
2 技芸の諸相
・前提――演奏の一回性
・名技志向/反名技志向
・完全志向-作品志向
・聴衆の要/不要
3 演奏技芸の行方
・技芸のモードの移り変わり
・録音の影響
・コンクールの影響
・新旧の技芸の並存
第5章 内向きの演奏、聴き手、アマチュア
1 身を以て知る/味わう:「内」向きの演奏、あるいは根源的演奏
・音楽の認識、理解の場としての演奏
・音楽の享受=快楽の場としての演奏
・演奏ゲームでの位置づけ
2 聴く意図:演奏ゲームの参加者としての
・演奏ゲームにとっての聴き手
・ゲームの選択
・演奏への働きかけ
・演奏への言及ゲーム
3 音楽を愛でる人:演奏ゲームにおける「アマチュア」の存在
・「アマチュア」という語
・アマチュアの領分
・役割の違い
・第1部の結語
第2部 演奏の行為論
第6章 音楽作品の演奏ゲーム
1 ゲーム論の構図
・問題の確認
・ゲーム論の視点
①ゲームと規則の関係
②ゲームの根拠の不確かさ
③ゲームの内/外
2 音楽作品の演奏ゲーム
・ゲームの構成
Ⅰ-1 音楽作品の解釈ゲーム[以下、「音楽作品の」は省略]
Ⅰ-2 創造ゲーム
Ⅰ-3 技芸ゲーム
Ⅱ-1 認識ゲーム
Ⅱ-2 享受ゲーム
Ⅲ 聴取ゲーム
Ⅳ 言及ゲーム
・諸ゲームの相対性
・ゲームの不確定性
3 ゲームの営み:解釈ゲームの場合
・多種多様な解釈の並存
・部分ゲーム
・ゲームのネットワークとその変動
・ゲーム内行為の社会的分業
第7章 演奏のマネジメント:演奏のコミュニケーション論
1 コミュニケーションの場としての演奏ゲーム
・演奏ゲームにおけるコミュニケーション
・コミュニケーション観の転換――安冨歩のコミュニケーション論
・演奏ゲームにおける調和
2 マネジメントという視点
・「マネジメント」とは何か
3 演奏ゲームのマネジメント
・ある架空の事例
・演奏ゲームにおけるマネジメントの指針――演奏者の場合
・聴き手(あるいは、言及行為)のマネジメント
・全体の結語:たかが音楽、されど音楽――「演奏ゲーム」の意義
註
おわりに
補遺:演奏について考えるためのCD40選