日中はまだ暑いが夜はかなり涼しくなってきた。すると、「秋の日の……」ではないが、ヴァイオリンの音色が恋しくなる。のみならず、今年は自分でも弾いてみたい気分になっている(これは多分に辛い翻訳の仕事からの「現実逃避」願望の現れであろう)。
学部学生時代と卒業後に合わせて数年間弾いたきりでその後はほとんど楽器に触っていないので(当時は楽器を買う余裕がなく、常にどこかから借りていたので、その都合がつかなくなって、それっきりである。また、その後の住環境ではヴァイオリンを弾くことなど無理だった)、ほぼ完全に弾き方など忘れてしまった。が、だからこそ、今、改めて初歩から練習を始めたら面白いかもしれない。
もっとも、その際には騒音をまき散らし、家族に迷惑をかけることになるのは必定なので、仮に練習を始めるとすれば、「サイレント・ヴァイオリン」を使いたい。調べてみたらけっこう安価なものがあるようなので、初心者にはそれで十分であろう。さて、この「計画」は実行に移されるであろうか、それとも夢想に留まるであろうか。
「サイレント」楽器で弦楽四重奏をやったらどうなるだろうか。かなりシュールな光景が現出することになるだろうなあ。しかも、既存の作品ではなく、この媒体の特質を活かした新曲を書くと面白かろう。何よりも演奏者自身の楽しみのために、そして、そのかすかな音を近くで聴く(のみならず、演奏のありようを観る)ことのできる者のために。