急にジョルジェ・エネスク(1881-1955)の作品が聴きたくなり、手持ちのCDから交響曲第1番(1905)を選ぶ。随分久しぶりに聴いたが、やはりすばらしい。作品のできもさることながら、「元気の出る」音楽であるところがよい(手持ちのCDとは異なる演奏だが:https://www.youtube.com/watch?v=cpvHR7hmE78)。エネスクの音楽はしばしばいろいろな面で「過剰」さを感じさせられるのだが、なぜか、それを不快に感じたことはない。逆に、好ましささえ覚えるほどだ。
このエネスクと同じく作曲と演奏で活躍し、生まれた年も同じならば、西洋音楽の「中心地」からずれたところで生まれ育ったという点でも同じなのがバルトークだ。私はこのバルトークももちろんそれなりに好んで聴いているが、どちらかといえばエネスクの方にいっそうの親近感を覚える。実は、昔々、彼の弦楽八重奏曲(1900)を初めて放送で聴いたときには、正直「?」だったのだが、後年、別な録音を聴き、その豊穣な音楽にすっかり心を奪われてしまった(とともに、以前聴いた演奏が「よくなかった」ことにも気づいた)。以来、エネスクは私にとって「大切な」作曲家の一人である。
以前、エネスクの回想録の邦訳が出ていたのだが、版が途絶えて久しい。仏文畑で音楽にはあまり詳しくない人が訳したためか、あまりよいできではなかった。昔は超マイナー作曲家だったエネスクだが、今やそんなことはないし、ヴァイオリン関係者も興味を持つだろうから、たぶん、それなりに読まれるはずである。というわけで、新訳の登場を期待する。