たとえばピアノを専攻する学生が作曲を学ぶ場合、和声法や対位法などの純然たる「書式」の学習から入るよりも、先人のピアノ名曲を手本にいきなり模作を試みる方がよいかもしれない。もちろん、最小限の和声や対位法の知識は必要だが、それは必要に応じて参照するに留め、とにかく、とことんお手本を真似るようにするのだ。この楽器特有の書法も含めてである(ただし、自分で弾けるものに仕上げねばばらない)。もし、その人に作曲のセンスがあるのならば、このやり方で十分に曲が書けるようになるはずだ(そもそも、昔の人はそうやって作曲を身につけていたのだから)し、それで書けない人はいくら「書式」を学んでも無駄であろう。