2021年5月15日土曜日

正体不明な作曲家

  作曲家としての金澤攝さんはなかなかに正体不明な人である。30年以上、攝さんの作品をあれこれ聴き、楽譜を読んできたが、その作風はわからないままだ。

どうやら攝さんにとって作曲は己の個性を示し、誇る場ではないらしい。とはいえ、たとえば次のような曲は元ネタがありはするものの、決してそのコピーでもパロディでもなく、何か得体の知れないものが随所に見え隠れする:https://www.youtube.com/watch?v=extnz8NZjfE。そして、それが耳をとらえて放さない。

 18世紀半ば以降、「独創性」や「個性」というものは芸術家の身の証しだったが、その追求が「芸術」を自縄自縛に陥れてしまった。そこから脱出するための1つのヒントを攝さんの作曲のありようが示しているように私には思われる。