2021年5月19日水曜日

ドナトーニ《思い出》

  昨今の世情を思うにつけ、自分の中に何とも言えないもやもや感、フラストレーションが生じる。それを音で表すとすれば、たとえば次のもの、すなわち、フランコ・ドナトーニ(1927-2000)の《思い出――室内交響曲 op. 18》(1967)などがまさにぴったりだ:https://www.youtube.com/watch?v=kTszWLt7HN0

 そこではいわば「出口なし」の場の中でさまざまな力がぶつかり合い、混沌が生まれるが、音楽作品ゆえに終わりがあり、いちおうの解決がもたらされる。ただし、それはいかにもとってつけたような(その共和音はシェーンベルクの同題の作品に由来する)ものであり、なかなかにブラックだ。とはいえ、それは同時に得も言われぬユーモアをも感じさせるものであり、だからこそ、時折、この作品を私は聴きたくなる。