アマチュア合唱団向けの作品は数多あり、少なからぬ名曲があるようだが、同じ「歌」でも独唱用となるとどうか? 現代の日本の作曲家がもっと力を注ぐとよい分野であるように私には思われるが、どうだろうか?
スクリャービンは著作権が切れてから随分経つにもかかわらず、まだ信頼に足る楽譜があまり出ていない。ソナタはHenle版がありBaerenreiter版がもうじき完結するようだが、他の作品はごくわずかしか手がつけられていないのが残念なところ(ロシアで新しい版がぽつぽつ出ているようだが、ピアノ曲はまだソナタなどに留まっているようだ)。
Doverのリプリント版は小品集については初版に基づいているが、これが誤記の宝庫で、まことに困る。しかも、小さな曲集を構成する曲のうち、前奏曲とエチュードを別の巻に収めているものだから、実に使いづらい(この「曲集の解体」は全音版でもなされており、しかもこちらは抜粋のかたちをとるものだから、いっそう難儀する)。
その点、春秋社版は、資料批判の点では原典版のような精密さこそないものの、まあ、それなりに信頼できる、使いやすい楽譜である。 というわけで、当面はこれにお世話になるのがよさそうだ。