人は誰しも自分を取り囲む「現実」の中で生きている。が、その中身は人それぞれで、たとえ同じ空間を共有していたとしても、各人にとっての現実は異なる。
それゆえ、自分にとっての現実を安易に一般化するのは禁物だし、まして他者に「同じもの」として押しつけることなど論外だ。「私は私、あなたはあなた」である。
が、「私」を尊重して欲しければ、「他者」も尊重しなければならない。
皆が同じことを考え、同じふうに行動していたら、何か対応しきれない事態が生じたときには全滅するしかない。が、皆がそれぞれ適度に違ったふうに考え、生きていれば、「何か」を乗り切る術が見つかるかもしれない。
ここ数日、大林宣彦監督の作品を観ている。私は氏の映画が大好きなのだが、未見の作品がいろいろある。先日観たのは『野のなななのか』(2014)であり、今観ているのが『この空の花 長岡花火物語』(2012)だ。いずれも現実と非現実、そして、「戦争の記憶」が交錯する何とも幻想的かつ超現実的な、だが、最終的には観る者を現実の問題へと向かわせ、何かを考えさせずにはおかない名作だと思う。とりわけ年若い人たちにこそ勧めたい。