今でこそ日本人の体格はかなりよくなったが、昔には西洋人と比べればかなり貧弱(という言い方はあまりよくないかもしれないが……)だったことは否めまい。そして、おそらく、そのことは西洋音楽の演奏においても少なからず影響を及ぼしていたはずだ。
体格の違いゆえに、西洋人には難なくできることが、日本人には難しいということもあったろう。すると、その差を埋めるべく、バレーボールで「回転レシーヴ」を編み出したごとくに、日本独自の工夫があれこれとなされたに違いない。
だが、その「工夫」は「差を埋める」に留まらず、同時にオリジナルの音楽のありようとは良くも悪くも何か違ったものをも生み出してしまったのかもしれない。
このような視点から日本の演奏家教育や演奏の実際の歴史を振り返ってみると、いろいろと面白いことが見えてくるのではなかろうか。