私が学生に対して(たまには胸の内で思うことがあっても)決して言わないフレーズがある――「なぜ、そんなことができないんだ?」。できないものはできないのであって、それに「なぜ?」とわざわざ言うのは言葉の暴力だから(さらに言えば、私自身、できないことだらけなので)。
なお、「できない」のには教え方が悪いということもあろう。「できない」にもいろいろと段階というものがあり、順序を踏めばできるようになることもある。それゆえ、学生にいきなり高度な要求をしてはいけないわけだ。とはいえ、少しばかり高い課題を与えた方が学生のやる気が出るというころもある。結局、これは相手次第であり、かく言う私自身、そのさじ加減には苦心しているのだが、果たしてどの程度うまくいっているのか心許ない。