「なじかは知らねど」急にギオマール・ノヴァエス(1895-1979)の演奏が聴きたくなって、手持ちのCDを取り出してきた。すると、もう、「どうにも止まらない」。どれもこれもすばらしく、次から次へと聴き惚れてしまう。ブラジル人の彼女がパリ音楽院の「留学生枠」の試験に臨んだとき、ドビュッシーは絶賛したというが、さもありなん。
たとえば、シューマンの《交響的エチュード集》作品13などはどうだろう(https://www.youtube.com/watch?v=G14MBrfSqoM)。こうしたものを聴くと、昨今の演奏は(もちろん、すべてがというわけではなく、中にはすばらしいものがあるにしても、傾向としては)どれもこれも実に味気なく感じられる。いったい、何が違うのだろうか。才能の違いもあろうが、たぶん、それ以上に音楽を取り巻く環境が大きく変わってしまい、その結果として演奏のありようも違ったものになってしまった、ということなのだろう。もちろん、これはたんに「昔はよかったなあ」という話ではないし、現代は現代なりの表現様式というものがあるわけだが、それはそれとして、私はこのノヴァエスの演奏に大いに心惹かれてしまう。
明日場衆院選の投票日。それで何かが急に大きく変わることはないにしても、だからといって貴重な権利を放棄する人が少しでも減ることを祈りたい。