2025年1月14日火曜日

シベリウスのソナチネ

  シベリウスの《3つのソナチネ》作品67を私はもっぱらグレン・グールドの演奏で聴いてきた。実に味わい深い演奏であり、こうしたものを知ってしまうと、わざわざ他の演奏を探そうとは思わなくなる(https://www.youtube.com/watch?v=taiU7IbqNDE)。

 ところが、今日、なぜかふと気になって、他の演奏を聴いてみた。驚いた。まるでテンポが違うのだ。グールドの演奏はまことにゆっくりとしたものだったのだ。そして、他の演奏はそれに比べれば格段に速く、まるで別の曲に聞こえたのである(https://www.youtube.com/watch?v=ZEbvscLJQZg)。

 にもかかわらず、グールドの演奏に対する感動は変わらなかった。いや、それどころかむしろ深まったのである。シベリウスの音楽の一面を見事にとらえつつ、独自の音楽世界を現出させた想像力と創造力のすばらしさに対してだ。

 もちろん、「適正な」テンポの演奏にも感動を覚えた。それまで自分がとらえ損なっていたこの作品の魅力を教えられたからである。

 それにしても、このソナチネは実に不思議な作品である。ピアノ曲でありながら、管弦楽曲が生み出す時空の広がりを強く感じさせるのだが、決して管弦楽の模倣をしているわけ ではない。いや、実に面白い。