私は文楽をとても好ましく感じているが、歌舞伎は好きではない。役者の仰々しい演技よりも人形の切り詰められた表現の方に大いに心惹かれるのだ。そして、そこに絡む太夫の語りと三味線の音楽にも。
その文楽の太夫の語りにもいろいろなタイプがあるようだが、声色や表情を事細かく使い分けるような語りよりも、むしろシンプルな表現の語りの方に私は魅力を覚える。もっとも、まだまだ初心者なので、もっといろいろ聴かないと本当のところはわからないだろうが……。
大阪に住んで30年ほどになるが、文楽を初めて劇場で観たのは一昨年のことである。思えば、何ともったいないことであったか。わざわざ遠方へ出かけなくても近場でそれが観られたのだから。が、これからせいぜい楽しませてもらうことにしよう。