必要があって次のものを読んでいる:Lincoln Ballard, Matthew Bengtson & John Bell Young, The Alexander Scriabin Companion : History, Performance, and Lore. London: Rowman & Littlefield, 2017(https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-02-9781442232617. 内容についてはリンク先を参照のこと。なお、安価なペーパーバック版が出ており、当然私はこちらを入手した)。これがなかなかの好著であり、日本語で読めるスクリャービン文献がごくごく限られている(のみならず、少なからず問題も孕んでいる――上掲書の第5章では邦訳もあるサバネーエフやバゥワーズなどの著作が‘mythmaking’なものとして批判的に論じられている――)ので、彼の音楽愛好者には一読をお勧めしたい。
中でも興味深いのがMatthew Bengtsonの手になる第3部、‘In Performance’だ。著者はピアニストであり、その視点からスクリャービンの音楽を検討している。これはスクリャービンを弾く人にとってはまことに有益な内容だと思われる。
それにしても、今やスクリャービンはそれなりに人気のある作曲家なので、日本語で読めるきちんとした評伝や解説書が出てしかるべきであろう。というわけで、その道の専門家に期待したい。