2025年3月10日月曜日

ライナー・リーン

  ドイツ・グラモフォンの「アヴァンギャルド」シリーズ(21枚組)中のジョン・ケィジの音楽を収めたCDを再聴した。演奏はライナー・リーン(1941-2004)指揮のアンサンブル・ムジカ・ネガティヴァ

このコンビは(今は亡き)EMIからもケージ作品集を出しており、私は昔々こちらの方を愛聴していた(当時はLP。ただし、すでに廃盤だったので中村(金澤)攝さんから借りてカセット・テープにコピーした。その後、このディスクがCD化された際には購い、今でも時折楽しんでいる)。

「ムジカ・ネガティヴァ」という名前はいかにも60年代後半に若者だった人がつけそうな名前である(「これはアドルノに由来するものだろうなあ」と思っていたら、やはりそうだった:https://www.deutschlandfunkkultur.de/das-ensemble-musica-negativa-music-before-revolution-100.html)。そして、そこで取り上げられた音楽もまた、既存の芸術音楽を「否定」するものだった。

だが、「否定」はいつまでも続けられるものではない(とはいえ、このアンサンブルの最後の演奏は1992年だとのこと)。その後リーンは有名なMusik-Konzepte叢書を創刊して編集者となり、さらにはフランクフルト(アドルノの生地!)歌劇場の顧問も務めている(https://www.mqw.at/institutionen/kulturmieterinnen/artists-in-residence/2010/rainer-riehn)。もちろん、それらの活動の中にも「否定」の精神は生きていたことだろう。20世紀後半の芸術音楽史の登場人物の1人してなかなかに興味深い存在である。