2025年3月19日水曜日

もはや「全集」が出る時代ではない……のかも

  シェーンベルクの楽曲については全集が刊行されているし、著作についても現在進行中である。ストラヴィンスキーについてはそうしたものはまだないが、いずれ出るであろうことは想像に難くない。シェーンベルクの弟子のうちで一番人気のあるベルクも全集がまとめられている最中だし、アイスラーのようなかなりマイナーな人でさえそうだ(ヴェーバーンの全集はどうなるのだろうか?)。その他にも20世紀前半に名を成した作曲家についてはきちんと校訂された「全集」なり、まとまった「作品集」なりがいろいろ刊行されている。

 では、20世紀後半の作曲家についてはどうなるだろうか? たぶん、ほとんどの作曲家について「全集」は出ないのではなかろうか。1つにはますます逼迫しつつある楽譜出版事情や研究資金調達の難しさのゆえに。そして、もう1つには、「全集」を出すに値すると多くの人が認める作曲家が(おそらく)いないがゆえに。もしかしたら、何人かの作曲家については国威発揚のために採算度外視で「全集」がつくられるかもしれないが(たとえば、ポーランドのルトスワフスキやハンガリーのリゲティなど)、たぶん、そのような作曲家は十指に満たないだろう。

 もっとも、そもそも個人の「全集」をまとめるということ自体の賞味期限がもはや切れているのかもしれないが。