万人に共通して感知される「調性格」というものはないにしても、1人の作曲家の中には(自覚の有無はさておき)あるかもしれない。すなわち、ある作曲家の作品全体を見渡したとき、特定の調よる作品に何か共通した性格が見られる、ということだ。
この点で今日、ふと気になったのがラフマニノフ。彼の交響曲とピアノ・ソナタの第1番はともにニ短調である。また、ピアノ協奏曲の中でもっとも力が入っている第3番もまた。そして、米国に亡命後に書かれた唯一のピアノ独奏曲たる《コレッリの主題による変奏曲》も。すると、「ラフマニノフとってニ短調という調は何か特別の意味を持っているのかも」と考えたくなるところだ。