2025年3月24日月曜日

ある日の戯れ

  まず、ピアノの鍵盤を適当に音を出さずに押さえ、ソステヌート・ペダルを踏む。それから、やはりまずは適当な音をいくつか弾く。すると、ペダルで保持された音だけが残り、その倍音上にある音も共鳴する。そこで、その具合を探りつつ、弾く音を選び、響きの差異を味わいながら、鍵盤の上で音の戯れを続ける。そして、それに飽きてきたら、保持する音をリセットし、同じ要領で弾き続ける――先日、このようにして遊んでみたが、これが実に楽しかった。

そのとき、音数は少なくした。1つ弾いた音の行方にじっと耳を澄ませて聞き入り、それに対する反応として次の音をおもむろに弾く。先行する音に対して、どんな音を選び、どのタイミング、どの強さやタッチで弾くかをそのつど瞬間的に決め、「行方も知らぬ」音の「道」を進んでいった。すると、次第に感覚が研ぎ澄まされていく一方、不思議な爽快感がわき起こってくる。

このピアノによる「瞑想曲」は弾く本人にとってはこの上なく楽しいものだが、到底人様には聞かせられない。それゆえ、家族の留守中にこっそりと……。