2020年5月19日火曜日

出られない部屋?

 三善晃(1933-2013)はアンリ・デュティユー(1916-2013)のことを「長いこと、そこから出られない部屋みたいなものだった」と言ったという。なるほど、三善のある時期までの作品には露骨にデュティユーの影響が見て取られる。そして、そこからなんとかして「出る」ことを試み、《レクイエム》前後の作品では脱出に成功しているようだ。
が、その後の作品を見ると、またしてもデュティユーの影が見えなくもない。もちろん、この場合には昔のような露骨な影響というよりも、三善の個性の方が勝ってはいる。「部屋は出た」ものの、まだその部屋に通じる扉は閉じられてはいない、といったところか(これは三善を貶めてこう言うのではない)。まさに両者の間には「円環と交差」があるわけだ。
その三善の《ピアノ・ソナタ》(1958)は今やすっかり普通のレパートリーの仲間入りをしたようで、you tubeでも種々の演奏を聴くことができる。が、残念ながらなかなかよい演奏には出会えない。そんな中で次の演奏はまことに素晴らしい:https://www.youtube.com/watch?v=6qyZo4uG0Zw
実は以前CDで聴いていたときにはあまり好きな演奏ではなかったのだが、他の演奏と聴き比べてみて、ようやくその見事さに気づかされた(恥)。