現代作品には「いったいどうやって演奏したらよいのか?」と考え込まざるを得ないものが少なくない。たとえばピアノならば、多声的に書かれた、しかも普通の意味での拍節を持たないような複雑なリズムやテクスチュアを持つ作品がいろいろある。そうしたものをどう分析し、練習し、弾きこなすかを、具体的な作品の特定の箇所をあげて掲示板上で意見交換するのだ。
聴き方についても同様。「クラシック音楽」に馴染んだ耳からすればちんぷんかんぷんな「音響」を「こういうふうにすれば楽しく聴ける」という流儀を作品やその特定の箇所について各人が意見を提示し、それを巡って議論を交わす。
こうした演奏法や聴き方は、インターネット時代以前ならば「企業秘密」であったり、公開されるにしても有料のレッスンや講座で伝授されたり、書籍や雑誌記事で「売られて」いたりしていたものである。が、今や「現代音楽」を含む西洋芸術音楽がどんどん衰退しつつある時代。ならば、情報をどんどん無料で公開し、公の場で議論をすることでその活性化を図った方がよいのではないだろうか(もちろん、これは「現代音楽」に限ったことではない)。
こうした「フォーラム」は誰に対しても開かれるべきものだが、次の2点を参加者は厳守すべきであろう。すなわち、(1)他者からの意見・批判は真摯に受け止めねばならない。また、他者への意見・批判も真摯になされねばならない (2)匿名、仮名は認めない――この2点である。(1)は生産的な議論を繰り広げるために絶対に欠かせない条件だ。とりわけ後者の点については、決して他者を愚弄・嘲笑するような言辞、あるいは「批判のための批判」は慎まねばならず、あくまでも議論をうまく先に進め、多くの参加者を納得させるようなものの言い方が求められる。また、(2)は(1)を実現するための「保険」のようなものである。また、無責任な「匿名・仮名言論」を排除してインターネット上での言論とコミュニケーションの質を高めることに貢献するという意味もある(ちなみに、このブログを「閲覧者のコメントを許可しない」設定にしてあるのは、匿名・仮名のコメントを排除するためだ。中には貴重なコメントもあるのかもしれないが、私はそれをよりも匿名・仮名言論の排除を優先する)
……などと書いているうちに、どんどん話が大きくなってきた。が、もちろん、たとえば私個人がこうしたインターネット上の「意見交換の場」をつくったところで、さほど広がりは持たないだろう。が、1つひとつの場は小さくても、別々に似たようなことを試みる人が増えれば、やがてお互いの場に横の繋がりができて、面白いことになるかもしれない。というわけで、今すぐにというわけにはいかないが、いずれ自分で試してみたいと思っている(「現代音楽」以外の話題を取り上げるかもしれないが)。「我こそは!」と思う方は是非とも試みられたい。