「作曲家」バーンスタインは生前にはどちらかといえば不遇な存在だった。指揮者としてあまりに輝かしい経歴を積んでいただけに、なおのこと。彼の保守的かつ折衷的な作風は「前衛」音楽華やかなりし時代には「シリアスな」音楽の作曲家にはあまり本気で相手にされていなかったようだ。自演以外での作品の演奏頻度がどれほどだったのかは知らないが、他者による録音がある時期まであまりなかったのは確かだ。
ところが、バーンスタインの没後、状況は変わる。作品はどんどん録音され、大曲《ミサ曲》ですら数種類の音盤があるくらいだ(近年この曲が大阪で上演されたのを私は聴き逃してしまった。残念至極)。また、彼の作品の研究書さえ出るようになった(何と、ドイツのLaaber社の「大作曲家とその時代」シリーズにさえ取り上げられるようになっている!)。まさに時代は変わったのである。
私個人としてはバーンスタインがマーラーに匹敵するほど偉大な作曲家だとは考えられないが、まことに興味深い存在だとは思う。彼の作品は20世紀という錯綜した時代のある面を映し出しているようなところがあり、そこが音楽自体の中身と相俟って、とにかく面白い。そういえば、今年はバーンスタインの没後30年。というわけで、自宅で手持ちのCDによって「バーンスタイン・フェスティヴァル」を楽しむことにしよう。