2020年5月20日水曜日

《弦楽のためのレクイエム》の元ネタ?

 人間には「無から有を生み出す」ことは不可能なので、創作にも何かしら元になるものがあって当然。最初は真似から始まり、それを土台に次第に自分らしさを築き上げていく中で、元になったものの痕跡も姿を消していく。
 ところで、以前、次の曲を初めて聴いたとき、ある別の人の作品が強く連想された:https://www.youtube.com/watch?v=lTc0T2tJsIg
これはアンドレ・ジョリヴェ(1905-74)の《弦楽のためのアンダンテ》(1935)という作品であり、これにおそらく想を得たのではないかと想像されるのが武満徹(1930-96)の《弦楽のためのレクイエム》(1957)だ:https://www.youtube.com/watch?v=iSUPX0sOgjc
初期武満といえば、メシアンやドビュッシーからの影響が取りざたされるが、その2人よりもこのジョリヴェの作品の響きに《レクイエム》は近い。そのジョリヴェに関心を示していたのは「実験工房」での仲間、湯浅譲二(1929-)だが、もしかしたら彼の影響で、あるいは、自身のフランス現代音楽への関心から、ジョリヴェのこの作品を武満が知っており、影響を受けた可能性は十分にあろう。もちろん、だからといって名曲《弦楽のためのレクイエム》の価値が下がるわけではない。