2020年5月25日月曜日

人生いろいろ

 京都にはこれまで少なからぬ音楽家が輩出した高校がある。通称「堀音」。1948年に「京都市立堀川高校音楽科」として始まり、1997年に「京都市立音楽高校」として独立したのち、2010年に「京都市立堀川音楽高校」と改称し現在に至る(ちなみに、こうした「音楽大学への進学に特化した高校」というのはもはや歴史的役割を終えたと私は考えている。この点についてはいずれ改めて論じてみたい)
 とはいえ、もちろん卒業生のすべてが「プロ」になっているわけではない。それどころか、音楽とは全く別の道へ進んだ者も少なからずいるはずだ。では、そうした卒業生にとって、この学校に学んだ体験はその後の人生の中でどのような意味を持ったのだろうか? 中には「貴重な体験だった」と肯定的にとらえている者もいれば、「あんな学校へ行くんじゃなかった」と後悔している者もいよう。ともあれ、この高校は「進学目的」が極めてはっきりしており、在学中は競争に次ぐ競争で常に厳しい現実を突きつけられるだけに(と私が言えるのは、インフォーマントが1人いるからだ。もちろん、1人の卒業生の体験を一般化するつもりはないが、そこに何かしら真実があるのも確かだ)、卒業生にとっては在校時の体験は良くも悪くも強烈なものとして残っていることだろう。
そうした音楽とは別の道に進んだ卒業生でこの学校での体験を少なくとも否定的にはとらえていない人たちの生き方に、私はむしろ興味を覚える。彼(彼女)らに尋ねてみたい。「現在、音楽はあなたにとって、どのような意味を持つのですか?」と。そして、どんなに些細な点ででもよいが、彼らにとって(西洋芸術音楽に限らず)音楽が何かしら今でも「よき」ものであってくれればいいなあ、と思う。