昔、仕事でいろいろ海外のオケの実演を聴く機会があった(今はもうないし、それを積極的に求めたいとも思わない)。そのたびに何に一番驚いたかといえば響きの豊かさであり、迫力だ。とりわけ、弦楽器の「鳴り」が日本のオケとは根本的に異なるのだ。そして、いつもそのことを不思議に思っていた。
が、あるとき、ふとその理由が1つの仮説として浮かんだ。「それは言語の影響ではないか?」と。欧米諸語の発音が「喉」からなされ、音が朗々と響かせられているのに対して、日本語の発音は逆に喉を詰めて一音一音を切り、主に口腔でなされているがためにどうしても響きが浅くなる。そして、この「発音の感覚」が楽器を弾く際(に限らず、音を聴く際)にも何かしら反映されているのではないだろうか?
まあ、この「仮説の正否はともかく、日本のオケと海外のオケとの「響き」の違いは機械で解析すればはっきり出てくるはずだ(さもなくば、かくも違って聞こえるわけがない)。そして、「響き」以外の点でもいろいろ音(楽)づくりの面で両者の間には「違い」が見つかる(しかも、個人の演奏家で見るよりも、「集団」たるオケで見た方がそれは顕著に現れる)のではないだろうか。私はその「違い」を文化の違いとしてまことに面白く感じるし、日本のオケの響きを無理に変えるべきだとも思わない。これはこれでよいではないか。