2020年7月3日金曜日

ローレン・ラッシュ

 CDの新譜情報を某ショップで見てみると、ベートーヴェンのものがやたらに目につく。これはクラシック音楽の世界も先が長くないことを示すものなのか、それとも、CDメーカーが聴き手の望むものを読み誤っているのか、果たしてどちらなのだろう? いずれにせよ、この企画の貧困ぶりと怠惰な精神にはため息が出るばかり。ベートーヴェンを本当に尊敬し、彼の音楽を愛するのならば、こんなに次々とCDなど出すものではない!

 米国の作曲家ローレン・ラッシュ(Loren Rush, 1935-)の作品はなかなか耳にすることができない。寡作家だということもあろうが、たぶん、本人はそれほど自分を売り込むことに興味がないのだろう(と、作風から推察される)。が、その抒情性溢れる音楽は十分に現在の聴き手(や演奏家)にも喜んで受け入れられるのではないか。
 私が彼の名と作品を初めて知ったのは、例によって金澤攝さんのところでだ。このラッシュの傑作《砂の中で》(1967-68)を金沢で日本初演したのが20歳前後の攝さんであり、そのときの録音(やLPで他の作品)を聴かせてもらい、すっかり魅せられたのである。以来、ずっと気になっているのだが、残念なことにディスクの新譜には出会えていない。
 You tubeでいくつか聴けるので、ここでご紹介を。まず、ピアノ曲《おおスザンナ》(1970):https://www.youtube.com/watch?v=Qzt1XNdANc4
先に「抒情性溢れる音楽」と述べた意味がこの1曲でおわかりいただけよう。この曲名には曲中に引用されている有名な某オペラの一節が関わっている。
 次にラッシュにしてはなかなかの大作《歌と踊り》(1975):https://www.youtube.com/watch?v=OIgHY8YaTf0
ここでは抒情性に加えてなかなか暴力的なところも。これは初演の録音で指揮は小澤征爾だ(彼はラッシュの他の作品の初演も担当している)。
 《砂の中で》の録音も以前はyou tubeにあげられていたのだが、残念ながら今は削除されている。いずれこの傑作が日本で「再演」されることを期待しよう。