2020年7月2日木曜日

「偶然」という名の必然?

 自分が日頃触れている音楽の「幅」を考えると、今更ながらに呆れてしまう。この広い世界にある(あった)多種多様な音楽のことを思えば、なんとまあ「狭い」ことよ、と(これは音楽に限ったことではない。他のあらゆる面に関して同じことが言えることだ。若い頃にはその自覚があまりなかったが、今は幸いにしてある。それはつまり、自分とは異なる他者の存在が昔に比べていくらかは見えるようになったということだろう)。もちろん、いつまでも同じところに留まっていたいわけではなく、何か違ったものに出会って驚きや感動を味わいたいと常に思っている。が、これは自分の興味・関心が自ずと広がるのに任せておくしかあるまい。
すると不思議なもので、時折、思いがけない「出会い」の瞬間が訪れるのだ。たとえば、マイルズ・デイヴィスとの出会いがそうだ。40代前半のあるとき、なぜかふと彼の音楽が聴きたくなったのである。それまでほとんど関心がなかったのに(ただし、どこか心にひっかかるところがあったのは、以前、このブログで述べた通り)……。そこで試しに23枚聴いてみたところ、たちまち魅せられてしまう。そこで次々とアルバムを聴き、関連する書籍を読むうちに、すっかり彼の音楽の虜になってしまった。とともに、このミュージシャンの偉大さにただただ圧倒された。そして、このマイルズをきっかけに、他にも何人かお気に入りのジャズ・ミュージシャンができ、それまでの自分の「狭い」音楽の世界が少しは広がったのである。
近年でいえば、「歌(曲)」という分野に私はようやく出会いつつあるところだ。それまでは「自分は器楽志向(指向、思考)の人間で、声楽など関心外だ」と涼しい顔をしていたのだが(恥。それまでにも好きな声楽曲はあれこれあったのだが、今にして思えば、多分に「器楽」と同じように接していたのである)、あるときから「声」と「言葉」への興味・関心が急激に強まったのである。これも別に「お勉強」の結果ではなく、気がついたらそうだった、としか言い様がない(実は間接的なきっかけが1つあるのだが、これについてはまた機会を改めて……)。そして、この場合もやはり、自分の音楽の世界、ひいては他の世界もがさらに少し(だけにしても)広がりと奥行きを増しつつあるのを感じる。
運がよければ、生きている間にこうした「出会い」がまだ何度か訪れることだろう。さて、それはどんなものだろうか。そして、どんな驚きをもたらしてくれるだろうか。