2023年10月17日火曜日

クレンペラーのストラヴィンスキー

  オットー・クレンペラーが指揮したストラヴィンスキーの《3楽章の交響曲》を久しぶりに聴いてみた。これがまた何ともすばらしい。今まで聴いた中で最高ランクの演奏である。では、何がすばらしいのか。それは音楽の軽やかさと響きの透明さである。「中庸な表現」と言い換えてもよい(この点でたいていの指揮者は「やりすぎ」か「やらなさすぎ」だ)。もちろん、だからといって、緊迫感にも欠けていない。
 クレンペラーとストラヴィンスキーは全くの同時代人であり、その時代の感覚を共有している。また、前者は作曲も手がけ、「創造」のなんたるかもわかっており、演奏をたんなる「再現」だとは考えていない。
 もちろん、クレンペラーが指揮したドイツ、オーストリアの古典、あるいはマーラーなども見事だ。が、それ以上に私はストラヴィンスキーの演奏に心惹かれる。ああ、それなのに……クレンペラーが遺してくれた録音は数少ない。残念至極。