以前話題にしたフローリアン・ウーリヒの『シューマン・ピアノ曲全集』のCDがやっと届いたので聴き始めている。いくつかの作品を聴いてみたが、試聴したときに感じた通り、演奏の質はなかなかのものだ。というわけで、当分はこれで楽しめそうである(というわけで、シューマン・ファンには強くお薦めしたい)。
シューマンはメジャーな作曲家であり、多くのピアニストが好んで弾いているが、作品の取り上げ方にはかなり偏りがある。すなわち、ピアノ曲に創作が集中していた初期作品の中の限られたものや、後の時期の1、2の作品はやたらに弾かれているが、それ以外のものはそうでもない。そこにはそれなりによい作品が含まれているのに、もったいないことだ。
それゆえ、そうしたシューマンの「あまり弾かれないピアノ曲」を聴きたければ、結局録音を聴く(か、さもなくば、譜面を眺めて頭の中で音を鳴らすか、ピアノで音を拾ってみる)しかない。その意味で、ウーリヒの全集はまことにありがたい存在だ。
実のところ、これはシューマンのピアノ曲に限ったことではない。演奏会で聴きたくても聴けない作品は数多あるわけで、そのことに不満を抱いている聴き手はそれなりにいるのではなかろうか。