2024年12月3日火曜日

伝統邦楽の引力

  1つ違いの私の兄はポピュラー音楽を好んで聴いてきた人であり、そのために少年時代、クラシック音楽派の私とは諍いが絶えなかった。が、その間に私は知らずしらずのうちにいろいろなポピュラー音楽に馴染むこととなり、今となってはまことにありがたいことだったと思っている。

 その兄が最近くれたメールの中に、能や文楽を楽しんでいるとあった(前者に関しては、金沢には宝生流の伝統があり、立派な能楽堂もある。私も学生時代に帰省したときにはしばしばそこに出かけた)。が、その文面を読み、「なるほどねえ」と思うことはあっても、不思議に感じることは全くなかった。かく言う私も近年、文楽に大感動している。

 兄にせよ、私にせよ、「洋楽」に身を浸して生きてきたわけだが、その2人が還暦直前の齢にして伝統邦楽にも魅了されているというのは、なかなかに面白いことである。安直に「DNA」などという言い方はしたくない(し、そもそも、こうした語の使い方は不適切だと思っている)が、やはり、日々の暮らしの中で蓄積していた何かが伝統邦楽への共鳴をもたらしたのだろうか?