2024年12月4日水曜日

妙なきっかけで

  昔々、少年時代に私がはじめて伝統邦楽への関心を何かしら抱いたのは、今にして思えば奇妙なきっかけだった。つまり、邦楽自体を聴いた結果ではなく、武満徹の《ノヴェンバー・ステップス》で使われていた尺八の音に心惹かれ、そこから尺八本曲への興味が生じたのである。まあ、これも仕方ないことかもしれない。というのも、当時の私には他に伝統邦楽に触れるきっかけなどなかったのだから(中学校の音楽の時間に鑑賞教材としてそうした音楽に触れたはずなのだが、そのときには何も感じなかった)。そして、私同様、 《ノヴェンバー・ステップス》経由で邦楽への耳を啓かれた人は存外少なくないのではなかろうか。

 私より下の世代の人たちの場合、音楽科教育で伝統邦楽がもっと積極的に取り上げられるようになっているものの、そのことで邦楽に関心を持つ人は増えたのだろうか? この点については大いに興味がある。