2021年11月10日水曜日

シューベルトのソナタの楽譜を買い替えたいのだが……

気がついたら小さい音符を読むのがしんどくなっていた。若い頃は細かいスコアでも全く苦にならなかったのに、いつの間にかピアノの楽譜でさえ、「音符の大きいもの」を探すようになっていたのである(涙)。

今まで用いていたシューベルトのソナタの楽譜になんとなく読みにくさを感じ始めたので、別の版を探すことに。そこでヴィーン原典版とベーレンライター版が候補にあがり、今、両者を見比べている。そして、音符の大きさとレイアウトのよさという点で前者に軍配が上がりつつあるのだが、1つだけ難点が……。価格である。ヴィーン原典版は音楽之友社から3巻本で出ているのだが、1巻の価格が税込み6270円もするのだ。さすがにこれではちょっと手が出ない。さて、どうしたものか。

ところで、その価格を見ると、わかることがある。1つはシューベルトのピアノ・ソナタの楽譜にはさほど需要がないということだ。同じ出版社から同じシリーズで出ているモーツァルトやベートーヴェンのソナタはもっと安いが、それは「売れる」からであり、シューベルトのソナタが高いのはさほど「売れない」からだろう。そして、もう1つわかるのは、「そもそもクラシック音楽自体にさほど需要がない」ということだ。シューベルトの楽譜自体が売れていなくとも、他のクラシック音楽の楽譜や書籍が売れているのならば、その「おこぼれ」でもう少し低廉な価格設定ができるはずだが、そうはなっていないとなれば、やはりクラシック音楽自体の需要が昔ほどではないからだろう。そして、それだけにその苦境の中で何とかやりくりして楽譜なり書籍なりの供給を続けている出版社の努力には素直に頭が下がる(というわけで、シューベルトのソナタをいずれ購えるように小銭を貯めていこう)。

 もっとも、クラシック音楽関係のものに限らず、専門書の出版は洋の東西を問わず、なかなかに大変そうだ。洋書のペーパーバックなどでも、昔ならば考えられないような価格設定がされており、こちらにもなかなか手が出にくい。さて、これからどうなるのであろうか。


 ちなみに、私がシューベルトのピアノ・ソナタの魅力に気づいたのは30代になってからのことで、それまではどこがよいのか全くわからなかった。ブラームスの室内楽に目覚めたのもやはりその頃である。また、シューマンの交響曲が面白いと思えるようになったのは40代後半になってからだ。ジャズを積極的に聴くようになったのも同様。そして、「歌」というものに本当の意味で関心を持つようになったのは(恥ずかしながら)50代になってからである。これからもそうした「出会い」や「目覚め」がたぶんあることだろうが、そう考えると、いろいろとつらいこともある憂き世も捨てたものではないと思える。

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 私がシューベルトのソナタに関してヴィーン原典版の方を好ましく思った理由はもう1つある。それは、ト長調ソナタD894第1楽章第57小節の上段にある音について、誤り(作曲者の書き間違え)の可能性を指摘していることだ。ここは以前から私も妙に思っていた箇所なのだが、ベーレンライター版では全く言及されていない。……が、このベーレンライター版ではアーティキュレイションの不備が補われており、これはこれで捨てがたい。 さて、どうしたものか。

 

 ピアニストの韓伽倻さんが亡くなられていた:https://news.yahoo.co.jp/articles/b7c8552dad3ecfca8e687642e0ada28a33d4fecf。この方の演奏は今はなきイシハラホールで聴いたことがあるが、演目の1つがシューベルトのト長調ソナタだった。本人による選曲は「幻想」にちなむものであり、プログラム・ノートは私が書かせていただいたが、その際、ご本人にお話をうかがっている。穏やかさの中にもパッションを秘めた方だったが、ソナタの演奏(のみならず、他の演目も)はまことに感動的なものだった。ともあれ、ご冥福をお祈りしたい。