2021年4月24日土曜日

およそ異なる世界観を持つ者との共生

 このところ中田考の一般向け書籍何冊かに目を通していた。なるほど、それなりに勉強になったが、いずれもまことに巧妙に書かれた「布教活動」の書物だとわかり、この人の書き物は(図書館に予約中の本が1冊あるので、それを最後に)もう二度と読むまいと思った(なお、私は「布教活動」自体を否定しているわけではない。が、悩み多き少年少女には中田の本を読むことは勧めない)。

 その中田との共著書として飯山陽という人のことを知った。その共著とは『イスラームの論理と倫理』(晶文社、2020年)で、往復書簡というかたちを取るこの書では2人の話は全くかみ合っておらず、それにはただただ驚いた。が、飯山の述べていることに興味を覚え、他に2冊ばかり読んでみたのである。

 そのうちの1つが『イスラム2.0――SNSが変えた1400年の宗教観』(河出新書、2019年)。この書で著者はイスラム教という宗教の基本的な構えを簡潔明瞭に述べ、20世紀末以降に進行しているこの宗教の変化(原理主義化)を実例に基づき説明したのち、イスラム教徒との「共生」の指針を示している。

 著者の(少なくとも同書での)筆致はいたって冷静であり、日頃イスラム教とは概ね縁遠い日本人にとって有益な知識が同書からは得られよう(Amazonを見ると、いかにもその道の研究者と覚しき人の手になるレヴューもあり、そうしたものは同書――に限らず、この飯山の他の著書にも――に批判的だが、堂々と実名で批判すればよいのに……)。のみならず、最後の「共生」を論じた章はイスラム教徒との関係だけではなく、日常生活の多くの場面に応用できるだろう(この章だけでも同書を読む価値は十分にある。とりわけ、悩み多き少年少女には一読を勧めたい)。

 

 それにしても、日本の義務教育で宗教、政治、経済の基本を教えないのはなぜだろう?「国際化」云々を言うのならば、世界の人々の行動の根底にある原理を知らしめることは中途半端な英語教育よりもはるかに重要だと思うのだが……。