2021年1月26日火曜日

三善晃の《レクイエム》が書かれてから半世紀

  先日、三善晃の《レクイエム》を聴いた(「レクイエム」とは「死者のためのミサ曲」のことであり、この曲で弔われているのは第二次大戦の同胞の死者だ)。正直なところあまり楽しい作品ではない。が、時折、無性に聴きたくなる。いや、「聴かねばならない」という気がするのだ。この作品が伝えようとするものから目を背けてはならないという思いからである。

私が生まれたのは戦後21年めの年。自分は直接あの戦争のことを知らないものの、体験者はまだ少なくなかったし、世の中にもその「記憶」が随所で保たれていた。が、時が経つにつれてそうしたものも次第に風化してゆき、のみならず歴史が「修正」されていく昨今。三善の《レクイエム》が書かれてからちょうど半世紀。こうした作品の持つ意義は作曲当時に比べて増してはいても、減りはしていないだろう。