2021年3月29日月曜日

異次元にある世界との共振

  ベートーヴェンの晩年のピアノ・ソナタにしばしば現れる長いトリルやトレモロ。それを弾いたり、聴いたりしていると、まことに不思議な感覚に襲われる。いわば、異次元にある世界と共振しているかのような。件のトリルなどはその世界をはっきりと見せるのではなく、存在を朧気に、だが確実なものとして感じさせるのだ。もう少しベートーヴェンが長生きしていたら、果たしてその異次元をいっそう明瞭に示すことができただろうか?それとも、その入り口に佇み続けるしかなかっただろうか?