2021年3月8日月曜日

ヤナーチェクの《弦楽のための組曲》

   作曲家の中には若くして高い水準に達し、その後はそれを少しずつ広め、深めていく人もいれば、「晩成」とまではいわないまでも、かなりの齢まで独自の作風に到達しない人もいる。前者に属するのがたとえばモーツァルト、ショパン、ラヴェルなどといった人であろうし、後者についてはヤナーチェクのような人の名をあげることができよう。

 そのヤナーチェクの若い頃の作品には《弦楽のための組曲》(1877)のようなものがある。これを聴くと後年のまことに刺激的な作品群と同じ作曲家の曲だとは思えないところがあるが、よく聴けばやはりヤナーチェクらしいところもないではない。

もし、こうした作品の延長線上で創作を続けていたら、ヤナーチェクに今日の名声はなかっただろうか? それとも、もっと大きな名声を得ただろうか? いずれにせよ、たんなる「若書き」として見過ごすには惜しい作品であり(ヤナーチェクに限らず、それなりに名をなした人の「若書き」というものはいろいろな意味で面白い)、だからこそ弦楽合奏の通常のレパートリーにも入っているわけだ。

 私は少年時代、珍しくも出かけた演奏会の1つでたまたまこの組曲を聴き、そのどこか「地上を離れている」かのような音調に心を奪われた(とりわけ、第2楽章:https://www.youtube.com/watch?v=NP8j5VTDgYk)。

そして、今でも大好きで、今日も久しぶりにCDで楽しんだ。後年のもっと「尖った」作品とともに。