2020年6月11日木曜日

まとわりつく感じ

 三善晃の《ピアノ・ソナタ》(1958)第1楽章第1主題の最初4小節を見ると、1オクターヴ中の11の音が使われている(そして、左右の手の音はほとんど重複しない)。そして、そこに出てこない音が次のフレーズの冒頭に現れ、そこからの4小節では12の音がすべて出てくる。この音使いは明らかに計画的なものであろう。が、音楽の流れはごく自然だ。
 右手最初の2音、EとG♭ は続くFに対する倚音であり、それがもたらす「まとわりつく感じ」がこの楽章の性格に大きく関わっているようだ。