2020年6月7日日曜日

現代に迫り来るHIP

 HIPHistorically Informed/Inspired Performance)の対象範囲はどんどん現代に近づきつつある。ストラヴィンスキーの《春の祭典》(1913)でさえ、もはやレパートリーになっているくらいだ。
 さて、20世紀ともなると、「作曲家の自作自演」の録音があれこれ残されている(ストラヴィンスキーなどはそれこそ自作のほとんどを録音している)。すると、そうした「録音」も重要な情報になるが、その扱い方については文献資料のみに頼っていた場合とはまた違った対応が必要になろう。作曲家が必ずしも最良の演奏者(解釈者)だとは限らず、自作自演が絶対の基準だというわけではないので、そうしたものも「解釈」の対象となるわけだ。
 195060年代の「現代音楽」の録音を聴くと、概して随分「尖った」演奏がなされている。そして、後の時代に行くほど角が取れて丸くなっているようだ。これには演奏家がそうした音楽に慣れて余裕ができたということがあろうし、また、演奏様式の変化ということもあろう。では、この頃の作品がHIPの対象となったときにどのように演奏されることになるのだろうか。これには些か興味がある。