2020年4月7日火曜日

音楽は劇薬

 私が音楽を「劇薬」だと考えている(このことは『演奏行為論』でも触れた)のも、まさに「正しさ」とか「理想」とかいったことが絡んでいる。それらの点は音楽を巡る人々の行為を統制しているものであり(「正しい演奏」とか「正しい聴き方」とかいうふうに)、そのこと自体は別に問題ではない。が、各人がその「正しさ」を妄信し、他の可能性を全く認めないとなると、これは問題である。そして、音楽には人をそう導いてしまいかねないところが多分にあるのだ(試しに、インターネット上で作品や演奏を評した種々の文言を見られたい。すると、そのうちの少なからぬものがまさにそうした「妄信」に支えられていることがわかるはずだ)。人は音楽に何かしら「よきもの」や「楽しきもの」を求め、それは多くの場合、満たされる。が、反面、その行為がしばしば「悪しきもの」や「不快なもの」へと反転してしまうのもまた確か。まこと、音楽は劇薬であり、取り扱いには注意が欠かせない。

 久しぶりにNHK-FM放送の番組表を見てみた。すると、まあ、聴いてみたいと思う番組がほとんどない。が、「FMシアター」がまだ健在なのは嬉しい。ラジオ・ドラマというのはあれこれ想像力をかき立てられて面白い。折り触れて聴いてみることにしよう。
 少年時代愛聴していた「現代の音楽」は今や、何と日曜の朝8-10~9:00というとんでもない時間に追いやられてしまった。いったい誰が、日曜の朝から現代音楽など聴きたいと思うだろう? 昔は同じ日曜でも夜23:00という絶妙な時間帯に放送されており、いかにも「秘密」めいた感じがとてもよかったが、そんな「昭和」の時代はもはや「失われた時」となってしまった……。